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2026年最新 | エルサルバドルの治安のリアル データで見る最近の動向

サンタアナ県メタパンのクリスマスの中央公園の様子 エルサルバドル

中央アメリカの小国、エルサルバドル。「世界最悪の殺人率」「凶悪ギャングの国」といった危険なイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

しかし現在、現地メディアや政府の発表では、「エルサルバドルは中南米で最も安全な国であり、殺人率はアメリカやカナダをも下回るレベルになった」という驚くべきデータが報告されています。

「えっ、あの危険で有名な国が本当に?」と思うのも無理はありません。今回は、公的な統計データをもとに、現在のエルサルバドルで何が起きているのか、なぜそこまで劇的に治安が改善したのかをわかりやすく解説します。




【事実】2025年の殺人率は「1.3〜1.36件」。中南米で最も低い水準へ

モラサン県の観光地であり過去内戦が激しかった地にあるホテルペルキン・レンカで見られた満点の星空

現時点での公式データによれば、2025年の人口10万人あたりの殺人率は1.3〜1.36件(殺人82件)で、これは過去50年で最低水準です。年ごとの推移を見ると、改善のペースがよくわかります。

  • 2025年1.3件10万人あたり 殺人82件(過去50年で最低水準)
  • 2024年1.9件10万人あたり 殺人114件
  • 2023年2.4件10万人あたり 

出典:エルサルバドル国家警察(PNC)、法医病理研究所、InSight Crime「2025 Homicide Round-Up」(2026年3月公表)、Tico Times(2026年1月、法務・治安省ビジャトロ大臣の会見報道)




かつて「戦争状態にない国として世界最悪の危険度」と言われた国が、今や中南米(ラテンアメリカ)で最も殺人が少なく、西半球トップクラスの安全度を誇る国へと一変しています。


ちなみに、警察庁が公表した犯罪情勢データによると、日本の2025年における人口10万人あたりの殺人件数(認知件数ベース)は約0.79件(約0.8件)です。




数字で見る現在の治安水準(人口10万人あたり)

殺人率(10万人あたり)年・出典
エルサルバドル1.3件2025年/PNC・InSight Crime
カナダ約1.9件2024年/カナダ統計局(公式確定値)
アメリカ合衆国約4〜5.7件(算出年・手法により差あり)2023〜2025年/FBI・比較研究

このように、数字上で明確にエルサルバドルの治安が改善していることが分かります。




以下は中南米諸国の殺人率に関するデータですが、ここからもエルサルバドルは近隣の国に比べてかなり低い水準であることが見て取れます。

InSight Crime’s 2025 Homicide Round-Up
InSight Crime analyzes organized crime dynamics driving homicide rates in Latin American and the Caribbean in our annual…




【補足】数字を読むうえで欠かせない3つの注記

エルサルバドルの警察車両

驚異的な数字である一方、フェアに扱うには次の点も併せて知っておく必要があります。

1. 政府統計の定義が他国より狭い 中南米の治安分析機関InSight Crimeの指摘によれば、エルサルバドル政府の統計は、無縁墓地で発見された遺体、警察との衝突による死亡、獄中死などを殺人件数に含めていません

2. データの独立検証が難しい状況にある InSight Crimeは、ブケレ政権下でNGOや独立系メディア、野党勢力への統制が強まっており、政府発表データを外部から検証することが年々難しくなっているとも指摘しています。数字自体は各種報道で広く引用されていますが、「政府発表がそのまま独立検証されているわけではない」という前提は知っておくべきポイントです。

3. 国際比較の前提条件が国によって異なる 殺人の定義(未遂を含むか、集計主体が警察か検察かなど)は国ごとに異なるため、単純な数値比較には一定の幅を持たせて見る必要があります。


しかし、それを差し引いてもかつての壊滅的な治安状態からギャング犯罪が激減したことは紛れもない事実です。


治安激変の最大の理由:「非常事態宣言(レヒメン・デ・エクセプシオン)」

この驚異的な変化をもたらした最大の要因は、ナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領率いる政府が強硬に推し進めた治安対策です。

2022年3月導入の「例外状態(Régimen de Excepción)

  • 内容逮捕状なしでの拘束など憲法上の権利を一部停止し、軍や警察を総動員してギャングを一斉摘発
  • 摘発規模:これまでに約8万4,000〜9万1,000人のギャング関係者が拘束・収監(誤認拘束後に釈放された約8,000人を含む)
  • 現在の状況この特別措置は何度も更新・延長され、現在も治安維持の根幹として機能し続けています※2026年6月時点

出典:エルサルバドル大統領府、エルサルバドル国立警察(PNC)、米議会調査局(CRS)レポート





一時的な措置として始まったこの宣言は毎月更新され続けており、4年以上が経過しています。以下の記事では、この51回目の延長について述べられています。興味のある方は翻訳して読んでみてください!

https://www.asamblea.gob.sv/node/13984




この政策は物議があるものの、大部分の人が生活の中に安心を取り戻すことができたという事実は否めません。

10年で80分の1以下へ!殺人率の推移

エルサルバドルの治安がいかに短期間で劇的に変わったかは、過去のデータと比較すると一目瞭然です。

年度人口10万人あたりの殺人率街の状況・背景
2015年約103〜106.3件世界最悪の殺人率。連日数十人が犠牲になる最悪期
2019年約36件ブケレ政権発足。「領土コントロール計画」により減少へ
2023年2.4件例外状態が定着
2024年1.9件前年からさらに28.1%改善
2025年1.3〜1.36件過去50年で最低水準

出典:世界銀行(World Bank)「Homicide Rate Data」、エルサルバドル法医病理研究所(IML)



2015年には年間6,600人以上が殺害される悲惨な状況でしたが、2025年は年間82件まで減少。10年足らずで殺人率は約80分の1まで激減した計算になります。


この宣言下の中で過ごした私にとって、これまでのエルサルバドルの実際を生で見ることはできていません。
ほんの10年程度前のことですが、地元の人々に聞くと、その時に比べれば明らかに生活がしやすくなった、昔は通行料をとられていたなど、治安の悪さを示す出来事には枚挙にいとまがありませんでした。

街中の防犯設備の強化:監視カメラ網「Sívar Seguro」の拡大

エルサルバドルの主要高速道路の様子。

治安の維持改善の一環として、街のインフラ面でも監視強化が進んでいます。

  • 首都サンサルバドル市は2023年末から本格導入した監視カメラシステム「Sívar Seguro(シバル・セグロ)」で、顔認証・ナンバープレート読み取り機能付きカメラ500台を6地区に設置(総投資額約8,400万ドル、最終的に1,350台まで拡大予定)
  • 2024年6月には、法務・治安省が韓国国家警察庁の協力で「CCTV監視制御センター」を開設。全国レベルでの映像監視インフラ強化の一環として位置づけられています
  • 2026年6月にはサンサルバドル市がさらに300台のカメラとスマートスピーカー50台超を追加設置し、既存の500台と合わせて計800台規模に拡大。この直近の増設はゴミの不法投棄対策など公共秩序維持も目的に含まれており、犯罪抑止だけが目的ではありませんが、街全体の監視インフラが着実に強化されていることがわかります

出典:エルサルバドル法務・治安省、サンサルバドル市役所発表(Infobae、El Mundo等の現地報道)




監視カメラシステムが800台というとかなり少なく感じますが、テレビの報道では、カメラがどこに設置されているかを知らせたり、見られていることを示すために、逮捕の援助になったという事実を日常的に伝えており、影響力があることをアピールしています。




私個人としては、監視社会の実現というよりかは、社会生活の改善を妨げるような行為をさせないためのモラル向上を目的としているような印象でした。


日本の外務省による「危険情報」の見直し

海外渡航の目安となる日本の外務省の危険情報にも、治安改善が反映されています。

  • 在エルサルバドル日本国大使館は2024年に「【危険情報】一部地域の危険レベル引き下げ」を発表し、実際に一部地域で危険レベルが引き下げられました
  • 外務省海外安全ホームページの最新版(2025年1月27日更新)では、次の水準が維持されています
    • サンサルバドル県中央市メヒカノス区など旧ギャング拠点6区レベル2(不要不急の渡航中止)
    • それ以外の全土:レベル1(十分注意)
  • 外務省自身も危険情報の本文中で「2024年の人口10万人あたりの殺人事件による死者数は1.9人」「拘束者数は8万人以上」と明記しており、政府として治安改善を公式に認識したうえで情報を継続更新しています

出典:外務省海外安全ホームページ「エルサルバドルの危険情報」(2025年1月27日更新)、在エルサルバドル日本国大使館ウェブサイト



まとめ:データが示すエルサルバドルの「今」

年に一度のラウニオン県コンチャグアで開かれたパトロン祭りの様子

公的データや各種公表数字を見ても、現在のエルサルバドルが「かつての危険な国から、中南米で最も殺人率が低い安全な国へと生まれ変わった」ことは間違いありません


  • 中南米で最も殺人率が低く、アメリカやカナダをも下回る水準(2025年:10万人あたり1.3〜1.36件)
  • 非常事態宣言と警察の総動員、監視カメラ網「Sívar Seguro」の拡大による厳重な治安維持
  • 最悪期(2015年)から殺人率は約80分の1まで激減
  • 日本の外務省も2024年に危険レベルを一部引き下げ、治安改善を公式に反映



一方で、政府統計の定義の狭さ独立検証の難しさという2つの留保条件があることも押さえておきたいポイントです。



加えて、中南米を5か国を同時期に旅行した個人の印象では、エルサルバドルは明らかに治安が良く、周囲を気にせずに歩くことのできる国だと感じました。治安に注意を払う必要がある地域を訪ねてみて初めて、それは大きなストレスなんだと気づきました。


データ上では極めて安全になったエルサルバドルですが、「では、実際に現地で2年間生活してみての体感はどうだったのか?」次回は、現地で暮らした生の体験談をはじめ、バスや配車アプリなどの交通事情、知人が遭ったスリの被害実例と防犯対策を詳しくお届けします!


出典:エルサルバドル国家警察(PNC)、エルサルバドル法務・治安省、InSight Crime「2025 Homicide Round-Up」(2026年3月)、カナダ統計局(Statistics Canada)、米議会調査局(CRS)、World Bank Homicide Rate Data、外務省海外安全ホームページ、在エルサルバドル日本国大使館




ライター
Moto
モト

理系大学院卒業後、新卒入社した自動車部品メーカーに7年勤務。
元気のあるうちに世界中の自然を堪能したいという夢をかなえるため一念発起し退職。31歳にて1人での海外ハイキング旅行を100日間実施。その後、中米エルサルバドルにて2年間滞在。趣味はハイキング、山歩き、カメラ、読書、食事。

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